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労働基準監督署の臨検にはどう対応する?臨検の概要や指摘ポイントを社労士が解説

最終更新日 2022.10.31

労働基準監督署の臨検にはどう対応する?臨検の概要や指摘ポイントを社労士が解説

人事や労務に関わる方であれば、労働基準監督署によって行われる「臨検」について耳にしたことがあるのではないでしょうか。

臨検で問題点が見つかると、是正勧告や指導が行われ、送検や社名公表のリスクがあります。そのため、労働基準監督署の臨検には企業として適切に対応しなければなりません。

また、臨検に備えることで労務環境の改善につながり、働きやすい企業としての評判を高めることにもつながります。

この記事では、臨検の概要や臨検に備えた対応方法、臨検でよく指摘される3つのポイントについて解説します。

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目次

    労働基準監督署による臨検とは

    労働基準監督署による臨検とは

    まずは、労働基準監督署による臨検の概要、種類と目的、スケジュールについて解説します。

    また、臨検で指摘されるとどうなるのか、臨検前に予告はあるのかといった人事担当の皆様が気になるポイントについても紹介します。

    臨検とは

    労働基準監督署による臨検とは、各企業が労働基準法などを順守しているか確認するための検査です。臨検は労働基準法第101条1項を根拠に行われます。

    労働基準法第101条1項
    「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」

    労働基準監督署は臨検で、各種法令で定められた労働条件が守られているかをチェックします。もし問題があれば指摘され、是正しなければなりません。

    臨検は、通常の定期検査のほか、労働者からの申告があった場合や労災が発生した場合などにも行われることを覚えておきましょう。

    また、臨検は労働基準法第120条を根拠に断ることができません。

    労働基準法第120条
    「次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。」
    「四 第百一条の規定による労働基準監督官(中略)の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者」

    臨検の4つの種類と目的

    臨検には次の4つの種類があり、それぞれ内容や目的は異なります。

    ・定期監督
    その名の通り定期的な臨検で、労働基準監督署ごとの年間計画に基づき行われます。

    ・災害時監督
    労働災害(いわゆる労災)が発生した際、原因を調べて再発を防止するために行われる臨検です。

    ・申告監督
    各事業所の労働者からの申告に基づいて行われる臨検です。賃金未払いや解雇などの労働者が救済を求めるケースでは、臨検で労働者からの訴えについて事実確認をしていきます。

    ・再監督
    上記の臨検で指摘された事項が是正されているかを確認されます。

    臨検のスケジュール

    臨検のスケジュールは一般的に以下の流れで進められます。(※1)

    • 1予告
    • 2調査
    • 3結果報告
    • 4報告書の提出

    順を追って解説します。

    予告

    労働基準監督署による臨検は予告なしで行われることが原則です。

    そのため、いつ臨検が行われても対応できるように日ごろから備えておく必要があります。

    なお、調査を拒否した場合や調査の妨害、虚偽の帳簿書類の提出など行った場合には30万円以下の罰金が科されるので注意しましょう。(※2)

    調査

    監督官は身分を明らかにし、調査の目的などを告げたうえで、責任者との面会に入り、帳簿の確認や事情聴取などが行われます。(※3)

    なお、調査時間は調査内容や指摘件数などによって異なります。

    結果報告

    調査の結果、法律違反や改善点が見つかった場合は、是正勧告や指導を受けることになります。

    是正勧告や指導の内容の書かれた書類は後日交付されます。

    書類には是正期日が記載されており、期日までに是正が必要です。

    報告書の提出

    労働基準監督署からの指摘された内容の改善が完了したら、是正(改善)報告書(※4)を提出します。

    是正(改善)報告書の書式に指定はありませんが、違反内容や是正内容、是正完了日などを記載して、会社名、住所、代表者名を記入し、押印したうえで提出をします。

    なお、書式は一部の労働局のホームページからダウンロードが可能です。

    臨検で指摘されたらどうなる?

    臨検で指摘されると、指導対応だけではなく会社の信用を失うリスクがあることを認識しておきましょう。

    指導対応

    臨検で指摘された場合、次の3つの措置が取られます。

    • 行政指導
    • 行政処分
    • 送検

    特に重大・悪質な違反の場合は送検されることがポイントです。それぞれ違反内容や対応方法が異なるので、1つずつ紹介します。

    まず、臨検で指摘事項がある場合は行政指導が行われます。

    法律違反ではないが要改善の事項がある場合は指導票、法律違反の事項がある場合は是正勧告書が提示されます。

    指導票の効力は是正勧告書の効力より弱いですが、労働者にとって望ましくない労働環境であることを指摘するに変わりありません。そのため、将来的な法律違反を防ぐためにも、できるだけ対応したほうがよい書類です。

    行政指導では是正しきれない重大な危険がある場合は、労働基準法103条・96条の3第1項の規定に基づく使用停止等命令書が交付されます。これは行政処分です。

    さらに重大・悪質な法律違反と判断されると、送検されることになります。

    会社の信用を失うリスク

    送検だけでなく行政指導(是正勧告があった)段階でも企業名が公表され、会社の世間的な評価に影響を及ぼす可能性があります。

    是正勧告の段階で企業名が公表されるのは以下2つ条件を満たす企業です。(※)

    • 社会的に影響力の大きい企業
    • 違法な長時間労働を繰り返し行なっている企業

    上記の条件に該当しない場合でも送検されると企業名が公表されます。

    企業名が公開されるとニュースやSNSで取り上げられ、信用を失うリスクがあります。臨検で指摘されないよう、日ごろからコンプライアンスの維持を心がけましょう。

    【社労士ポイント】臨検前に予告はある?

    臨検前に労働基準監督署から予告があるのか、気になる人事担当の皆様も多いでしょう。

    原則として、臨検は予告なしでの介入となります。ただし、すべての臨検が予告なしで行われるわけではありません。実務上は事前に必要な書類・日時が指定され、検査が行われる場合もあります。

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    臨検で提出する書類例

    臨検で提出する書類例

    臨検で提出する書類には、大きく分けて次の5種類があります。

    • 勤務時間にまつわる書類
    • 休暇にまつわる書類
    • 賃金支払いにまつわる書類
    • 労働安全衛生法にまつわる書類
    • その他、労働基準法にまつわる書類

    この5種類の書類の中で特に重要とされているものは次の8つです。

    • 就業規則(労働基準法第89条による)
    • 法定三帳簿である労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(労働基準法第107・108条による)
    • 労働条件通知書(労働基準法第15条による)
    • 時間外・休日労働に関する協定届(労働基準法第36条による)
    • 変形労働時間制に関する協定届(労働基準法第32条による)
    • 年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則第24条の7による)
    • 健康診断(労働安全衛生法66条による)
    • 安全衛生委員会(労働安全衛生規則第23条)

    労働基準監督署による臨検ではこれらすべての提出を求められる可能性があるため、それぞれの書類についての理解を深め、適切に管理しておくことが重要です。

    ただし、臨検での調査は「実態・規定・法律」を総合的に見て判断されます。そのため、「この書類だけで判断される」と決まっている訳ではないことは覚えておきましょう。

    ここからは、それぞれの書類の種類について、詳しく解説していきます。

    勤務時間にまつわる書類

    まず、臨検では勤務時間にまつわる書類の提出が求められます。

    勤怠実績の根拠書類としては給与の支払いの根拠となった勤怠実績が確認できる書類を用意しておきましょう。

    • 出勤簿
    • タイムカード

    出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録に関する書類は、5年(当分の間3年)の保管が義務づけられています。(労働基準法第109条)

    保管されていなければ、指摘される可能性があるため適切な管理が必要です。
    勤務時間の根拠書類としては以下を求められるケースが多いでしょう。

    • 就業規則
    • 労働条件通知書
    • 時間外・休日労働に関する協定届
    • 変形労働時間制に関する協定届

    労働者の勤務時間は就業規則や労働条件通知書などをもとに決められています。そのため、勤務時間が就業規則などの根拠に基づいた勤怠管理が適切に行われている必要あります。

    また、時間外労働の実績がある場合には、その根拠となる時間外・休日労働に関する協定届(36協定)の提出も必要です。

    休暇にまつわる書類

    休暇にまつわる書類の代表例として挙げられるものは、次の6つです。

    • 出勤簿、タイムカードなど労働時間を記録したもの
    • 就業規則
    • 労使協定
    • 賃金台帳
    • 労働条件通知書
    • 年次有給休暇管理簿

    労働者の休暇情報を管理することは、労働時間を適切な状態に保つためにも重要です。また、2019年4月からすべての企業に年5日の年次有給休暇の取得(労働基準法第39条7)が義務付けられるなど、休暇管理の重要性が高まっています。上記で紹介した書類は、情報の抜け漏れがない適切な状態にしておきましょう。

    賃金支払いにまつわる書類

    賃金支払いにまつわる書類としては、次の4種類を用意しましょう。

    • 出勤簿やタイムカードなど労働時間を記録したもの
    • 賃金台帳
    • 就業規則(賃金規定)
    • 労働条件通知書

    これらの書類は、勤怠実績や就業規則などに沿って適切に賃金が支払われているかを確認するために求められる書類です。誤りがあれば、賃金の不払いとして指導や是正勧告を受ける場合があります。日ごろから適切に賃金が支払われているか、徹底して確認を行いましょう。

    労働安全衛生法にまつわる書類

    臨検では、労働安全衛生法にまつわる書類が求められることもあります。主に求められる書類は、次の6種類です。

    • 安全管理者
    • 衛生管理者の選任書類
    • 安全委員会・衛生委員会の議事録
    • 委員会での調査審議状況
    • 産業医の選任状況と指導制度・実施状況
    • 健康診断の実施結果

    これらの書類の中には、健康診断の実施結果のように、労働者からコピーを渡してもらって保管する書類もあります。労働者が書類を無くす前にコピーの提出を連絡し、管理部門でしっかり保管しましょう。

    その他、労働基準法にまつわる書類

    ここまで紹介した書類以外にも、労働基準法にまつわる書類が求められることもあります。

    特に以下「組織図」「労働者名簿」は労働者の実態を把握するために必要な書類なので、突然求められて慌てることのないよう準備しておきましょう。

    • 組織図
    • 労働者名簿

    臨検でよく指摘される3つのポイント

    臨検でよく指摘される3つのポイント

    ここからは、臨検でよく指摘される3つのポイントについて紹介します。

    まず前提として、臨検(定期監督)で重点的な調査が行われる項目はその年によって異なります。厚生労働省の労働条件に関する総合情報サイトに掲載されている「労働基準監督官が行う監督指導の状況」をみると、一般的によく指摘されている項目は次の3点です。

    • 労働時間が管理できていない
    • 適切な賃金や残業代の不払い
    • 健康診断を怠った

    (※「機会や設備などの安全基準を満たしていない」は、工場や工事現場など一部の業界に偏る指摘となるためのぞきます。)

    臨検でよく指摘される3つのポイントについて紹介します。

    臨検でよく指摘されるこれらのポイントを把握して、日ごろからしっかり管理しておかなければなりません。それぞれの項目について、詳細を解説します。

    労働時間が管理できていない

    労働時間が管理できていないと、大きな問題になります。

    法律で定められた労働時間を超えている場合などは臨検で指導される対象となるので、日ごろから適切に管理しておきましょう。

    まず、1日8時間週40時間を超えると時間外労働となり、指導の対象となります。
    36協定を結ぶことで時間外労働が法的に許されますが、36協定を結んでいたとしても労働時間の集計を怠ることはできません。時間外労働をする場合は超過した時間の上限が月ごと、年ごとで守る必要があるため、注意する必要があります。

    適切な賃金や残業代の不払い

    労働時間が管理できていないと労働時間の把握ができておらず、実際に支払うべき賃金との乖離が起きてしまい、臨検で指摘されることがあります。

    以下のように令和2年度の監督指導結果において、適切な賃金や残業代の不払いが問題となった企業が全国で1000社以上存在しています。
    支払われた割増賃金は、1企業当たりの平均が658万円にものぼります。

    常日頃からの労働時間の管理によって、予期せぬ支払い命令に対応できるようにしましょう。

    引用

    • (1)是正企業数 1,062企業(前年度比549企業の減)
      うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、112企業(前年度比49企業の減)
    • (2)対象労働者数 6万5,395人(同1万3,322人の減)
    • (3)支払われた割増賃金合計額 69億8,614万円(同28億5,454万円の減)
    • (4)支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり658万円、労働者1人当たり11万円

    健康診断を怠った

    労働者の健康診断を怠った場合も、臨検で指摘されます。

    なぜなら、労働安全衛生法第66条に基づき、企業は労働者に対して医師による健康診断を実施しなければならないと定められているためです。

    臨検で指摘されないためには、毎年しっかり健康診断を実施するとともに、労働者に対しても受診を徹底することが重要です。

    【社労士ポイント】近年、重点的に調査している可能性がある項目とは?

    ここからは、労働基準監督署が重点的に調査している可能性がある項目を紹介します。それは、次の2つです。

    • 勤務時間や給与賃金(残業代)などの労働条件が守られているか
    • 職場環境が適切な状態なのか、健康診断が法令通り行われているかなど安全衛生が確保されているか

    この2点については、過去の調査結果から指摘が多かったため重点的に調査し、公式サイトでも注意喚起をしていると考えられます。(厚生労働省「労働基準監督署が行う監督指導の状況」より)

    そのため、近年は労働条件や安全衛生に関して重点的に調査されている可能性が高いです。

    なお定期監督は、毎年厚生労働省が策定する「地方労働行政運営方針」に沿って行われるため、上記2点のほか、重点的に行われる調査はその年によって異なります。

    臨検で指摘されないため、また、労働者に快適に働いてもらうためにも、勤務時間や給与賃金などの労働条件は順守し、職場環境は適切な状態を保つようにしましょう。

    臨検を乗り切るために勤怠管理をシステム化

    臨検を乗り切るために勤怠管理をシステム化

    ここまで、臨検で指摘されやすいポイントについて紹介してきました。臨検で特に指摘されやすい点は、労働時間が守られていないことや、それに付随して未払い残業代が発生していること、労働者の健康診断の未実施などです。

    特に労働時間の管理不備や未払い賃金の問題は、タイムカードが空白になっていたり、有給休暇の取得状況が把握できていなかったり、残業管理が紙で計算されていて煩雑化していたりすると、臨検で指摘される問題が起きやすくなってしまいます。

    臨検でこのような問題を起こさないためには、適切に労働時間を管理することが重要です。

    クラウド型勤怠管理システムであれば、臨検で指摘されやすい労働時間や有給休暇の取得、残業申請などの管理をインターネット環境があればリアルタイムにすべて簡単に行えます。

    たとえば、出退勤・残業・休暇取得など給与計算に必要な勤怠情報は1クリックで出力できるので、働き方に関するデータを一元管理できます。変形労働時間制や時短勤務、フレックスタイム制にも対応しているので、どんな企業でも導入できることも特徴です。

    また、労働者ごとの有給休暇の付与日、取得日、残数がひと目でわかるので、2019年4月からすべての企業に義務付けられている「年5日の年次有給休暇の確実な取得(労働基準法第39条7)」を忘れることもありません。

    さらに、タイムカードや出勤簿の打刻漏れの確認によって勤務実績の集計・締め作業に時間がかかっているような場合でも、システムに搭載されているアラート機能で月中から打刻漏れを防いだり、勤務表提出機能を使えば確認も容易になるため、仕事の効率化も期待できます。

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    臨検への備えは日ごろから

    この記事では、労働基準監督署によって行われる臨検の概要、提出を求められる書類例、指摘されやすい事項について解説しました。

    臨検は、労働者が適切な環境で働けているかチェックするための検査です。そのため、企業側が拒否することができず、もしも問題があれば行政指導や行政処分や送検といった措置が取られ、企業活動に大きなデメリットをもたらします。

    また、臨検で指摘を受けた場合には社名が公表される場合もあり、企業ブランディングの低下や営業停止になるケースもあります。

    そのような事態を防ぐためにも、臨検への備えは日ごろから行っておきましょう。特に、日々の継続的な勤怠管理を適切に行うことが重要です。現状の勤怠管理に不備を感じる方は、是非とも勤怠管理の方法を見直して対策することをおすすめします。

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    監修者
    北 光太郎

    北 光太郎

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    中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、自身でも労務専門サイトを運営している。

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