自社にあった変形労働時間制は?メリット・デメリットとあわせて紹介【社労士監修】

変形労働時間制

自社にあった変形労働時間制は?メリット・デメリットとあわせて紹介【社労士監修】

過労死など労働問題がクローズアップされるなか、「長時間労働の是正」をはじめとする働き方改革が根付いてきました。また、多様で柔軟な働き方の実現も、以前に比べると関心の高い項目の一つです。その解決策として「変形労働時間制」が注目を浴びています。本記事では変形労働時間制とは何か、その目的やメリット・デメリット、ほかの労働制度との違いなどをわかりやすく解説していきますので、自社への導入を検討する際などに参考にしてみてください。

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この記事の目次

    変形労働時間制とは

    変形労働時間制とは

    変形労働時間制とその目的

    変形労働時間制とは、労働時間を1日単位ではなく、月または年単位で計算することで、繁忙期や閑散期に合わせて労働時間を調整することを可能にした制度です。

    労働基準法による法定労働時間は「1日8時間、1週間40時間」と定められており、超過した場合は割増賃金が発生します。しかし業種によっては、繁忙期と閑散期の間に著しく差があり、どうしても勤務が1日8時間を超えてしまうというケースも出てきます。
    その際、変形労働時間制によって法定労働時間を超えた所定労働時間を設定することで法定労働時間を超過した勤務時間を時間外労働として扱わなくて済み、残業代をはじめとするコストを大きく削減することが可能になります。
    たとえば、繁忙期に1日8時間または月40時間を超える分の労働時間をあらかじめ想定しておいて、ほかの週の労働時間と調整し、一定期間内の総労働時間が法定労働時間内に収まるように調整すれば問題ないということです。変形労働時間制は、時期によって仕事量が大きく変わる業界・職種の場合、有効な働き方ができる制度であり、対象業務や対象労働者に関する制限はないことから、今後ますます活用する企業の増加が見込まれます。

    日本で変形労働時間制が制定された目的は、働き方が多様化する中、それに対応すべく仕事の状況に応じて働き方を柔軟に変えることで、企業にとっては業務の効率化、労働者にとってはワーク・ライフ・バランスを図るためです。
    実は、変形労働時間制が制定されたのは1947年(昭和22年)と意外に古く、その後1988年(昭和63年)に第三次産業の成長など日本経済の変化に合わせて変更されました。
    今日、労働時間の短縮が労働者の生活の質的向上にとどまらず、人手不足に悩む企業の雇用機会の確保などにおいてますます重要な課題になっています。その一つの方法として、変形労働時間制の意義はとても大きいものになっています。

    変形労働時間制の種類

    変形労働時間制の種類

    ※1 労使協定の締結による採用の場合、規模10人以上の事業場は就業規則の変更が必要です。
    ※2 対象期間における連続労働日数は6日(特定期間については12日)です。
    ※3 対象期間が3ヵ月を超える場合、週48時間を超える週の回数については制限があります。
    ※4 1ヵ月以上の期間ごとに区分を設け労働日、労働時間を特定する場合、休日、始・終業時刻に関する考え方、周知方法等の定めを行うこととなります。

    変形労働時間制は4種類に分けられます。

    1. 1か月単位の変形労働時間制
    1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の一定期間ごとに日または週の労働時間を柔軟に調整することができ、「一定期間内の平均労働時間が週40時間以下」とすれば法定労働時間を超えた所定労働時間の設定が可能になる制度です。

    2. 1年単位の変形労働時間制
    1年単位の変形労働時間制は、対象となる1か月超から1年までの労働時間を計算し、平均で1週間あたりの労働時間が40時間以内になるように設定することで、労働時間を柔軟に配分することを可能にした制度です。

    3. 1週間単位の変形労働時間制
    1週間単位の変形労働時間制は、ほかの種類とは異なり、一部の業種に適用を限定している制度です。導入対象となるのは、「労働者が30人未満」の「小売業、旅館、料理店、飲食店」に限られます。

    4. フレックスタイム制
    フレックスタイム制は、あらかじめ1か月から3か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間を定めておくことで、日々の始業・就業時刻を労働者が自主的に決めて働くことができる制度です。労働者が自分のライフスタイルに合わせて働くことで、労働時間の短縮化・効率化に繋げ、生活と業務の調和と労働意欲を引き出すことを目的に整備された制度です。

    自社がどの制度を選択すべきか迷った際には、以下のフローチャートを参考にしてください。

    〇変形労働時間制等の種類に関するフローチャート図

    変形労働時間制等の種類に関するフローチャート図

    1. 1か月単位の変形労働時間制

    1か月単位の変形労働時間制

    1か月の間で繁忙期と閑散期が大きく分かれる業種に向いている制度です。労働日や労働時間を柔軟に分配できることが主な特徴で、1年単位の変形労働時間制と違い、就業規則への記載が義務付けられており、就業規則自体が労基署への届出義務があるという背景から、労使協定の書面を労働基準監督署に提出する必要はありません。
    一方、従業員数10名未満の事業場で導入する場合、就業規則の届出は法律上不要ですが、労使協定の書面は届出の義務が発生します。
    ただし、休日は1週間に1日、もしくは4週間に4日確保しなければならず、始業および終業時刻は、事前に労使協定で決めておく必要があります。会社側の都合で勝手に変更することは認められていませんので、運用には十分な注意が求められます。

    また、1か月単位の変形労働時間制では、月ごとに週の労働時間を柔軟に調整できるとはいえ「一定期間内の平均労働時間が法定労働時間(週40時間)以下」でなければなりません。例外として、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業は、1週間の法定労働時間を44時間とすることが可能とされています。ただし、1年単位や1週間単位の変形労働時間制では週平均40時間以下とされており、44時間は適用不可となっています。
    1か月の変形労働時間制を適切に運用する上で、変形期間の暦日数と法定労働時間の総枠のスケジュール調整が大切です。週40時間と44時間の月ごとの法定労働時間の上限は、それぞれ次のようになります。

    月の暦の日数 週の法定労働時間が
    40時間の場合
    週の法定労働時間が
    44時間の場合
    28日 160.0時間 176.0時間
    29日 165.7時間 182.2時間
    30日 171.4時間 188.5時間
    31日 177.1時間 194.8時間

    1か月以内の一定期間の平均が法定労働時間の範囲内であれば、ある日に8時間、またはある週に40時間(特例は44時間)を超えて働いても、時間外労働とは認定されません。残業時間の計算方法は、1年単位の変形労働時間制と同じく、「日ごと」「週ごと」「月全体」の3つの基準に沿って計算した時間を合計した時間が、対象となります。

    ①日ごとの基準
    所定労働時間が「8時間を超えている日」については、所定労働時間を超えて働いた時間が割増賃金支払いの対象となります。すべてが残業時間として計算されます。一方、所定労働時間が「8時間以内の日」の場合は、8時間を超過した時間分のみが、対象残業時間とみなされるので注意してください。

    ②週ごとの基準
    所定労働時間が「週40時間(特例は44時間)」を超えている場合、所定労働時間を超えて働いた時間が、残業時間として計算されます。一方、所定労働時間が「40時間(特例は44時間)以内の日」については、40時間(特例は44時間)を超えて働いた時間のみ、残業時間としての対象です。「日ごとの基準」で算定された残業時間分は、週ごとの基準の計算からは除外されます。

    ③1か月の設定期間全体の基準
    月ごとの法定労働時間を超えて働いた時間が、残業時間になります。「日ごとの基準」「週ごとの基準」で算定された残業時間分は、月全体の基準の計算と重複してカウントされません。

    2. 1年単位の変形労働時間制

    1年単位の変形労働時間制

    GWやお盆休み、年末年始など繁忙期と閑散期がはっきりしている業種・職種に向いている制度です。
    効率的な労働時間の配分を行い、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的にした1年単位の変形労働時間制ですが、その分導入までの手続きや社内ルールは細かくなっています。導入の際には、1年単位の変形労働時間制について、労働者と使用者の間で労使協定を結び、書面を労働基準監督署に提出しなければなりません。このとき、以下の制限を守る必要があり、これに違反する労働時間および休日などのスケジュールは適用外となります。

    年間での法定労働時間数

    365日 2085.7時間
    366日(閏年) 2091.4時間

    休日や労働時間に関する項目

    1年あたりの労働日数 280日(年間休日85日)
    1日あたりの労働時間 10時間まで
    1週間あたりの労働時間 52時間まで
    原則連続で労働できる日数 連続6日
    特定的に連続で労働できる日数 1週間に1日の休み(最大連続12日)

    このほか、労使協定を結ぶ際には労働日の30日前までに1か月の予定を決めておくことが必要で、その後も30日前までに労働日を決めることが求められます。さらに、対象期間をその初日から3か月ごとに区分した各期間をチェックし、労働時間が48時間を超える週が3週以下でなければならないなど、多くの規定があります。
    このようにきめ細やかなルールを設定している理由は、1年単位の変形労働時間制が便利な制度である一方、基準を超えなければ偏ったシフト編成が可能になる恐れがあるからです。たとえば、GWやお盆休み、年末年始など繁忙期は忙しく働けても、閑散期にはほとんど仕事がないようなことになれば、労働者にとって生活に支障が出かねません。こうしたことから、1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、労働基準法を遵守した労使協定の定めと、労働基準監督署への内容提出が必須になっているのです。
    1年単位の変形労働時間制で残業が発生するのは、「日、週、対象期間で所定労働時間または法定労働時間の大きいほうを超えた」ときです。また、労働時間の繰り上げや繰り下げはできませんので、注意が必要です。

    3. 1週間単位の変形労働時間制

    適用するには「労働者が30人未満」の「小売業、旅館、料理店、飲食店」である必要があります。その理由は、業種の特性上、繁忙期と閑散期の差が大きく、天候などにも左右されやすい事情があるからです。たとえば、観光業を想像してみればよくわかると思います。

    1週間単位の変形労働時間制を採用する場合、「1日の労働時間の上限が10時間以内」かつ「1週40時間以内」という条件を満たすことが必要です。業種の特性上、就業規則に各日の労働時間を定める必要はありませんが、原則としてその週が始まるまでに、書面にてシフトを従業員に通知することが求められています。また、シフトを作成する際は、労働者の都合や希望を確認した上で行うことも通達として出ていることも、覚えておきたいポイントです。
    1週間単位の変形労働時間制の残業時間は、「日ごと」「週ごと」の2つの基準に基づいて合計時間を算定します。それぞれの特徴をよく把握し、労使間の無用なトラブルを招かないように注意が必要です。

    ①日ごとの基準
    所定労働時間が「8時間を超えている日」の場合、所定労働時間を超えて働いた時間すべてが残業時間の対象です。一方、所定労働時間が「8時間以内の日」の場合、8時間を超えて働いた時間のみが、残業時間と見なされます。仮に所定労働時間が7時間だとして、7時間30分働いても30分の超過分は割増賃金支払いの対象に該当しませんので、気を付けてください。

    ②1週間の設定期間全体の基準
    法定労働時間の40時間を超えた時間が、残業時間の対象です。たとえば繁忙期の1週間に毎日9時に出勤し、19時まで働いたとします。この週の終業時刻が18時で、週に5日勤務していた場合、毎日1時間の残業で合計5時間残業していたことになり、残業代はこの5時間が対象です。ただし、「日ごとの基準」で残業となった時間に関しては、週全体の基準の計算からは重複してカウントされません。

    1週間単位の変形労働時間制は、計画的な人員配置が困難な業界・業種に求められる制度です。そのため、かなり特殊な制度といえますが、上手に活用することで経営者にとっては安定的に事業の継続を図ることができ、労働者にとってはライフスタイルに合わせた働き方を実現することができます。導入する検討する際は、まず自社が対象となる業種・規模であるかどうかをチェックしましょう。

    4. フレックスタイム制

    フレックスタイム制

    フレックスタイム制を採用するには、「就業規則への規定」「労使協定」の2つの要件があります。まず、就業規定には「始業や終業の時刻は労働者が自主的に決定できる」といった旨の規定が必要であり、仮に就業規則がない場合はこれに準じるものに規定しましょう。
    次に、労使協定では「対象となる労働者の範囲」「清算期間」「清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)」「標準となる1日の労働時間」を定めます。また、任意ではありますが、就業規則で1日の労働時間の中で必ず勤務しなければならない時間帯、通称「コアタイム」を設けることが可能です。必要に応じて時間の取り扱いを決定しましょう。

    対象となる業務や労働者に制限はありません。清算期間は3か月以内の一定期間を定め、その期間の平均として1週間の労働時間が40時間を超えない範囲で労働します。実際の労働時間が過剰だった場合は時間外労働として清算し、仮に不足があった場合には、次の清算期間への繰り越しや賃金カットにて、清算を行います。また、清算期間が1か月以上になる場合は、労働基準監督署に労使協定の届け出が必要で、もし怠った場合は罰金となる可能性があります。

    就業規則の作成ポイント

    変形労働時間制で注意するポイントは、労働時間の繰り越しができないということです。変形労働時間制といっても、労働時間をまったく自由に決められるというわけではありません。就業規則に則り、所定労働時間に基づいた算出が必要です。特に1年単位の変形労働時間制を採用している企業では、年間の労働時間が法定労働時間内に収まっていないことがあり、年間休日が少ない場合などはさらに注意が必要です。
    変形労働時間制を導入する際は、従業員の働き方がこれまでとは変わるため、就業規則の整備が不可欠となります。対象者や労働時間、対象期間といった項目に関する記載内容の変更で、1年単位の変形労働時間制もしくはフレックスタイム制を導入する場合、「就業規則に労働時間制度として規定」「労使協定の締結と労働基準監督署への届け出」の2つが必須です。

    10人以上の労働者がいる事業所で1か月単位の変形労働時間制を導入する場合は、労使協定の締結もしくは就業規則への記載のどちらかだけで、労働基準監督署への届け出は必要ありません。一方、10人未満の事業所が労使協定で1か月単位の変形労働時間制を導入する場合は、就業規則の作成・届出義務が生じます。1年単位と1か月単位で求められる要件が異なることに注意しましょう。1年単位の変形労働時間制を導入するほうがより煩雑な手続きになるので、事前の準備が大切です。参考書式については、下記の記載例を参照してください。

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    よく間違えられる制度との違い

    よく間違えられる制度との違い

    裁量労働制

    裁量労働制とは、時間配分や仕事の進め方を労働者の裁量にゆだね、実際の労働時間に関係なく、一定の時間を働いたとみなす制度のことです。裁量労働制には、新聞記者など専門性が高い業務に従事する労働者を対象にした「専門業務型裁量労働制」と、企業の中枢で事業の運営に関する事項の検討・決定などを行う労働者が対象の「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

    変形労働時間制と裁量労働制の違いは、賃金支払いのもととなる労働時間の集計にあります。

    裁量労働制の場合は所定労働時間を定めて一定の時間を働いたとみなすため、給与支払いのための労働時間の把握は不要となります。たとえば、1日の所定労働時間が8時間に定められていたとすると、ある日は7時間働き、別の日は9時間働いたとしても、それぞれ8時間働いたとみなされます。そのため、残業時間の集計等が不要になるということです。
    一方、変形労働時間制は労働時間分の給与支払いが必要なため、実際に働いた労働時間分の把握が必要となります。
    (注意点として、労働安全衛生法の観点でみると裁量労働制の場合においても労働時間の把握が必要となります。必ずしもすべての場合において裁量労働制は労働時間の把握が不要というわけではありません)

    そのほかの違いとしては、裁量労働制は対象となる労働者の裁量が非常に大きいこと、そもそも労働時間や時間外労働などの概念がないこと、特定の業務に限定して適用が許されていることなどが挙げられます。

    シフト制

    労働時間が日によって変化する点で似ているシフト制ですが、成り立ちが異なります。

    シフト制は基本労働制をとっているため、原則通り1日8時間、週40時間の法定労働時間の範囲内でシフトを作成し、法定労働時間を超えた分は割増賃金の支払いが必要です。一方で変形労働時間制は、年・月単位など一定期間の総労働時間が法定労働時間内に収まっていればよいというものなので、1日8時間週40時間の基本の法定労働時間を超えている場合でも残業代が発生しません。なお、事前に取り決めた勤務時間を超えている場合は、その労働時間分の賃金は必要です。

    フレックスタイム制

    通常、労働者は会社に決められた始業時間に労働を開始し、会社に決められた終業時間に労働を終了しなければなりません。しかしフレックスタイム制は、会社ではなく労働者自身が、始業時間と終業時間を自由に決められることが大きな特徴です。働き方が多様化するなか、柔軟な働き方を実現するための制度といえます。

    変形労働時間制の4つの種類に関しては、次の章で詳しく見ていきましょう。

    変形労働時間制のメリットとデメリット

    変形労働時間制のメリットとデメリット

    企業

    企業にとって変形労働時間制の一番のメリットは、業務の繁忙度合いに応じて従業員に働いてもらう時間を調整できることです。たとえば、1年単位の変形労働時間制を導入した滋賀県の卸売業「株式会社山久」では、残業時間を月平均27時間から18時間へ減少することに成功し、働きやすい職場環境の整備を実現しています。あらかじめ年間カレンダーで会議や決算棚卸日などを特定することで、効率的な労働時間の配分に繋げていることは、業務多忙による過労や体調不良などの回避、ひいては従業員の健康を守ることになります。
    また、1か月単位の変形労働時間制を導入した東京都の服飾品小売業「タルボットジャパン株式会社」では、残業時間を前年同期から21.5%減少させています。こちらは業種の特性から社員の多数を占めている女性従業員が意欲や能力をより生かして活躍できる職場環境整備を整えるため、変形労働時間制を採用した事例です。
    エリアマネージャーが担当する店の各従業員の労働時間を把握し、残業時間が長くなる傾向の見られる店舗の店長に対し、シフトの調整等をアドバイスするなどきめ細やかな対応を行っています。店舗で1か月単位の変形労働時間制を採用しているため、店舗ごとに、繁忙日の労働時間を長くし、そうでない日の労働時間を短く設定するというように、メリハリを利かせたことも大きく、残業時間の短縮に繋げた好例といえるでしょう。

    このように、業務の忙しさに合わせて従業員に働いてもらう時間を調整できる変形労働時間制は、企業にとって大きなメリットがあります。
    一方、変形労働時間制を導入する際には「効率的な労働時間の配分の決定」「労使協定の締結」「就業規則の整備」をはじめ、思っている以上に手続きや制度設計に時間や手間がかかる点がデメリットです。
    さらに、導入すればそれで終了というわけではなく、正しく運用されているかどうかの確認や点検、複雑な残業時間の計算など、担当者の負担が増加する可能性があります。そうしたデメリットを避けるためにも、ある程度余裕を持って導入スケジュールを立てることが大切です。変形労働時間制を導入する際は、それに合わせて勤怠管理システムを新調するなど、スムーズに導入および運用できる方法を検討しましょう。

    従業員

    従業員にとって変形労働時間制で働くメリットは、「閑散期に長期休暇が取りやすくなる」「家族との時間や趣味の時間を増やすことができる」など、メリハリの利いた働き方が可能になることです。家族の形態も多様化するなか、子育てや介護の問題も千差万別になっており、そうしたことに対応できることも変形労働時間制で働くメリットといえるでしょう。あくまで仕事の状況と希望が合致してのことですが、繁忙期は1日の所定労働時間を10時間に設定し、週休3日にすることも制度的には実現可能です。
    一方、変形労働時間制で残業時間を計算する際は、事前に決められた所定労働時間を超えているかどうかが判断基準の一つになっています。仮に繁忙期の所定労働時間を10時間と設定している場合、8時間を超えても10時間を超えなければ残業代が支給されることがありません。たとえ変形労働時間制であっても、労働基準法の原則上、法定労働時間を越えた労働は割増賃金の支払い対象ですが、繫閑期にあわせて所定労働時間が定められているため、「繁忙期に長く働いたが、思ったより残業代が少ない」と感じるケースが生じます。
    会社側が変形労働時間制の導入に際し、きちんと説明することは当然ですが、労働者の側も残業時間算出のルールを理解しておきましょう。

    変形労働時間制導入における注意点

    変形労働時間制導入における注意点

    変形労働時間制は36協定が不要?

    変形労働時間制でも、あらかじめ決めた所定労働時間を超え、なおかつ法定労働時間を超える労働が発生する場合は36協定の締結が必要です。

    会社が「1日8時間、週40時間」の法定労働時間を超えて、労働者に時間外労働をさせる場合、36協定の締結が必要です。36協定は「時間外・休日労働に関する協定届」であり、労使協定で結ばれた後、労働基準監督署に届け出ることで初めて効力を持ちます。
    このことは、変形労働時間制を採用している企業にとっても同様です。

    一度決めた労働時間は変えられない?

    天災地変や機械の故障など、よほど緊急性が高く不可避の事情がない限り、労働時間の変更は認められることはありません。

    変形労働時間制でよく誤解されがちですが、所定労働時間を一度決定すると基本的に変更することはできません。たとえば、所定労働時間を7時間と定めている場合、8時間働いたからといって、翌日の所定労働時間を1時間減らして残業していないということにはなりません。たとえ平均して週40時間の労働時間の範囲内であったとしても、会社都合で直前に勤務時間のスケジュール変更を行った場合、変形労働時間制の要件を満たしていないことになります。最悪の場合、変形労働時間制の適用そのものが否認され、労働基準監督署からの指摘を受けることになり、所定労働時間を超過した分の割増賃金が発生する可能性があります。

    所定労働時間に満たなかった場合の対応は?

    所定労働時間に満たなかった場合については定められておらず、あらかじめ就業規則でルールを決めておくことが大切です。

    労働基準法には、所定労働時間を働いた労働者に対し、過不足なく賃金を支払うことが定められています。欠勤や遅刻、早退などが理由で所定労働時間に満たなかった場合、基本的には「ノーワーク・ノーペイ」の原則が適用され、会社は労働者が働いていない時間に対して、賃金を支払う必要はありません。ただし、フレックスタイム制の場合、清算期間を1か月以上にしている場合(清算期間は最大3か月目まで延長可能)ですが、翌月に繰り越すなどの対応も可能です。また、勤怠控除の金額は計算方法で大きく変動します。
    特に欠勤控除はその影響が大きく、無用の労使間トラブルを巻き起こす可能性もあり、欠勤や遅刻、早退などに関する自社のルールをきちんと整備しておきましょう。整備した後は、労働者に対して説明会を行うなど、職場全体の共通認識を高めることが大切です。

    まとめ

    変形労働時間制は、企業と労働者の双方にメリットがある制度です。うまく制度を導入することができれば、企業にとっては残業時間の抑制効果や残業代をはじめとした人件費の適切なコントロール、労働者にとっては柔軟な働き方が可能になることで個々のワーク・ライフ・バランスの実現が期待できます。特に、繁忙期と閑散期がはっきりしている業種での活用が期待できるでしょう。

    ただし一方で、勤怠管理の難易度が高くなるというデメリットがあります。日々異なる所定労働時間をもとに時間外労働を算出する必要があり、計算が複雑になりがちです。紙の出勤簿やエクセル、タイムカードで勤怠管理を行っており、集計を手作業で行っている場合は計算ミスが発生しやすくなります。
    労働時間の計算ミスは、たとえ過失であっても残業未払いがあれば支払いに応じなくてはならず、さらに残業代未払いを起こした企業と認識されることで社会的な信用を失いかねません。
    そのような状況に陥らないようにするために、変形労働時間制を導入するなら労働時間の管理方法を見直し、ミスが発生しやすいポイントをおさえたチェック体制を構築することをおすすめします。

    もし、現状の勤怠管理方法に不安がある場合は勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。勤怠管理システムには、事前に勤務時間を登録することで従業員の勤怠打刻情報をもとに時間外労働を自動集計する機能があるため、手間をかけずに正確な勤怠管理ができます。

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    石川 弘子
    • 監修石川 弘子
    • フェリタス社会保険労務士法人 代表
      特定社会保険労務士、産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント。
      著書:「あなたの隣のモンスター社員」(文春新書)「モンスター部下」(日本経済新聞出版社)
      https://www.ishikawa-sk.com/

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