【社労士解説】クラウド型勤怠管理システムを使う5つのメリット
クラウド型勤怠管理システムは出退勤時間や年次有給休暇の取得状況、残業時間など勤怠情報をクラウド上で一元管理ができるシステムです。クラウドシステムなのでインターネットに接続できる機器さえあれば、IDとパスワードを入力するだけでどこからでも使用することができます。
クラウド型勤怠管理システムを使うことで、人事労務担当者や従業員に生じる5つのメリットを社労士が解説します。
この記事の目次
法令順守しやすい
労働基準法には労働時間・休日・深夜労働の規定があり、(※1)使用者である企業には、労働時間を適正に把握する責務があると言えます。さらに、働き方改革関連法の成立に伴い労働安全衛生法が2018年に改正、2019年4月1日に施行されました。
長時間労働をした従業員を対象に医師による面接指導を実施するため、労働時間把握の義務化が法律に明記されています。(※2)また、2017年1月20日に厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、労働時間の管理は原則として以下の方法で行うこととしています。
- 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
労働安全衛生法の規定による労働時間把握の義務の目的は、すべての労働者の健康を確保することです。労働基準法の労働時間が適用されない管理監督者の労働時間についても、対象となることに注意しなければなりません。
クラウド型勤怠管理システムは、基本的に労働時間の記録を自分で操作できない仕組みのため、自分の出退勤記録が正しいことを第三者に視認してもらえる条件を満たしています。まさに、客観的な労働時間の管理として認められている、法律を遵守した労働時間管理といえます。
不正が防止できる
エクセルで出退勤時間や休暇の管理をしている場合、いつでも入力・修正・追記ができるため「従業員の不正入力」「データの改ざん」が行われてしまう可能性があります。出退勤や、残業時間の記録を自由に変更することが可能な状態は、客観的な労働時間の把握とはいえません。
クラウド型勤怠管理システムでは、勤怠情報の不正や改ざん防止に役立つ機能が備わっています。
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打刻時の位置情報(GPSなど)が取得できる
パソコン・携帯電話・スマートフォンから打刻したときの位置情報の取得ができるため、外出や出張時の直行直帰、在宅勤務やサテライトオフィス勤務、テレワークなど、様々な場面で活用できます。打刻した時点での出退勤の状況把握が可能なので、打刻場所を偽ったりすることはできません。
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修正に申請、承認フローを設定できる
打刻忘れ、遅刻や早退などで後から出退勤の打刻を修正する場合は、従業員の修正申請を管理者が承認し、承認された内容を勤務表へ反映する事が可能です。承認フローは、部署や部門ごとに設定することができ、従業員が自由に打刻時間を書き換えられないので不正防止に役立ちます。
人事労務担当者の業務効率化につながる
紙やエクセルで勤怠管理を行う中で、下記のようなお悩みはありませんか?
- タイムカードの打刻漏れや入力漏れの確認に手間がかかっている
- 締め日にタイムカードや出勤簿が空白だらけで給与計算に回せない
- 年次有給休暇の付与や失効の管理が面倒
「入力漏れ」や「誤入力」による集計ミス、給与システムへの入力ミスの防止には、ダブルチェックが必要となり手間と時間がかかります。そうした毎月の勤怠集計や給与計算の確認作業の業務効率化には、クラウドの勤怠管理が大変便利です。打刻漏れや申請忘れは、出勤簿上のアラート表示ですぐに気づくことができます。
また、年次有給休暇の付与数、残日数も一目でわかり、申請や承認作業はシステム内で完結するため、紙やエクセルによる申請や管理をなくすことが可能です。給与計算や勤怠管理に必要な情報も自動作成されるため、毎月の給与計算の作業はもちろん、そこからは派生する休暇の残数管理などの業務もラクになり、人事労務担当者の業務効率化につながります。
従業員もラク
クラウド型勤怠管理システムを導入した場合、人事労務担当者だけではなく従業員の業務効率化にもつながります。特に、営業など外出や出張が多い部署、外部の会議や出張が多い部署では、出勤退勤の打刻を行えないことが多く不便なのではないでしょうか。
以下、従業員側のメリットをまとめてみました。
【従業員のメリット】
- 通常勤務時はもちろん、直行直帰、出張、テレワークでも使える
- 自分の日々の勤怠や年次有給休暇などの情報をリアルタイムに確認できる
- 紙やエクセルの際、後からまとめて記入する際に起きがちな、申請漏れや入力ミスがなくなる
- インターネットにつながる環境があれば、PC・タブレット・スマホでどこからでも使える
- 上長等に印鑑をもらいに行くなどの手間が削減される
最近では、新型コロナウィルスでのテレワークの普及もあり、紙ベースでの勤怠管理をしていた会社が徐々にシステムを取り入れるようになってきています。今後は、ますますPC・タブレット・スマホによるクラウドを利用した効率的な働き方が進んでいくでしょう。
こうした時代の流れに合ったクラウド型勤怠管理システムは、従業員にとってもメリットが多いのです。
法改正に対応できる
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため、2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行されています。「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を主軸としてさまざまな法律が2021年以降も施行されていきます。
人事労務担当者は施行される法律に対応していかなければなりません。勤怠管理を紙やエクセル、タイムカードで行っている場合はもちろんですが、自社で開発しているシステムを使用している場合でも都度法改正への対応を行う必要が出てきます。
2023年4月からは、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の割増率(50%)の猶予措置もなくなり(※)より正確な労働時間の把握を求められます。
クラウド型勤怠管理システムは法改正に応じてアップデートされていくため、人事労務担当者の業務負担を最小限に抑えることが可能です。
不正防止や業務の効率化にも役立ち、法令順守しやすい。また、法改正にも対応できるクラウド型勤怠管理システムはたいへん有用なシステムです。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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- 監修加治 直樹
- 銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。
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