【社労士監修】特別休暇とは?給料の有無、休暇の種類、休暇制度のメリットや助成金について

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【社労士監修】特別休暇とは?給料の有無、休暇の種類、休暇制度のメリットや助成金について

特別休暇は、労働基準法などの法律に定めのない企業独自の休暇制度です。年次有給休暇や育児・介護休業のような法定休暇とは異なり、法的な制限がなく企業の業種特性や経営方針、従業員のニーズに合わせて企業の裁量で自由に導入の有無を決めることができます。

今回は、特別休暇の概要やその事例とあわせて、制度導入のポイントや助成金に関する情報を一挙にご紹介します。

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この記事の目次

    特別休暇とは?

    特別休暇とは??

    この章では特別休暇の法的義務についてお伝えします。
    特別休暇について理解を深めるために、法定休暇と特別休暇の違いもあわせて解説します。

    特別休暇は法律に定められていない

    特別休暇とは、労働基準法などの法律に定められていない企業独自に自由に設定できる休暇制度です。
    法定外休暇ともいわれています。法律上の決まりがないため、導入の決定から休暇の条件や内容、賃金の有無まで、労使の話し合いによって企業側で自由に設定できるところが大きな特徴です。

    給料の有無

    特別休暇は法律に定めがない法定外休暇のため、無給でも問題ありません。
    導入の際には、休暇制度の目的に応じて給料の有無を決めるのがよいでしょう。

    法定休暇との違い

    法定休暇と特別休暇(法定外休暇)との違いは、法律に定めがあるかどうかにあります。
    法定休暇は法律で定められている休暇となるため、一部例外を除き企業は従業員が取得を希望した際に拒否することができません。主な法定休暇の種類には、次のものがあげられます。

    【主な法定休暇一覧】

    • 年次有給休暇(労働基準法39条)
    • 生理休暇(労働基準法68条)
    • 母性健康管理のための休暇(男女雇用機会均等法12条)
    • 子の看護休暇(育児・介護休業法16条の2~16条の3)
    • 介護休暇(育児・介護休業法16条の5~16条の6)
    • 育児休業(育児・介護休業法5~9条の3)
    • 介護休業(育児・介護休業法11~15条)

    賃金支払い義務の有無については、それぞれ休暇の種類によって異なります。

    「年次有給休暇」は、文字通り有給での付与を義務付けています。

    「生理休暇」「母性健康管理のための休暇」「子の看護休暇」「介護休暇」については、有給・無給を問いません。

    「育児休業」や「介護休業」も有給・無給を問いませんが、休業取得時に一定の要件を満たせば、雇用保険法の定めにより雇用保険から育児休業給付金(※1)や介護休業給付金(※2)の支給を受けることが可能です。

    特別休暇の種類と導入事例

    特別休暇の種類と導入事例

    特別休暇のよくある種類と導入事例を「心身の疲労回復系」「ライフイベント系」「自己研鑽系」の大きく3つに分けて見てみましょう。

    心身の疲労回復系

    1.リフレッシュ休暇

    リフレッシュ休暇は、従業員が心身のリフレッシュを図ることを目的に任意のタイミングで取得できる休暇制度です。心身のリフレッシュにより就業意欲が高まることで、職場環境の改善が期待できます。

    休暇付与の事例として、勤続10年、15年、20年などの節目で長期休暇を従業員に与えるケースなどがあります。

    2.病気休暇

    長期にわたる療養が必要となる病気やケガには、企業のサポートが不可欠です。休職により一時休業するケースもありますが、通院しながらであれば仕事を続けることができるケースもあります。このような場合に、年次有給休暇とは別に病気療養で利用できる休暇制度です。

    時間単位や半日単位の取得を認める等、病気やケガの治療や通院のためにうまく活用できるようにすることで従業員が安心して働くことができるようになるでしょう。

    近年は、海外を中心にシックリーブ(sick leave)と呼ばれる有給の病気休暇の制度も広がってきています。

    3.ワクチン休暇

    ワクチン休暇は、新型コロナウイルス感染対策によるワクチン接種後、倦怠感や発熱などの副反応が発生した際に利用できる休暇制度です。

    厚生労働省では、ワクチン接種後に体調不良を訴える従業員が休暇を取得できるように、既存の休暇制度の見直しや新しい休暇制度の新設を推奨しています。

    4.夏季休暇、冬季休暇

    夏休みや年末年始の一定期間を休日や年次有給休暇とせず、特別休暇として導入している企業も少なくありません。

    厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」によると、2021年における特別休暇制度がある企業の割合は59.9%(前年58.9%)で、そのうち特別休暇として夏季休暇を設けている企業は42%(前年41.3%)にものぼっています。

    5.犯罪被害者等の被害回復のための休暇

    犯罪被害者等の被害回復のための休暇は、犯罪被害にあった従業員やその家族のケアが必要な場合に利用できる休暇制度です。

    犯罪による被害は、身体のケガや財産の損失だけではなく、事件に遭ったことによる精神的なショックや体調不良、周囲の無責任なうわさによる精神的な被害、医療費の負担、休職による経済的な損害が伴います。本人だけではなく、家族が被害に遭ったときにも利用対象にしたり、経済的な負担も考慮し有給の特別休暇とするのがよいでしょう。

    休暇付与の事例として、犯罪被害による精神的ショックや身体の不調からの回復、治療のための通院や警察での手続き、裁判への出廷などがあげられます。

    ライフイベント系

    1.慶弔休暇

    慶弔休暇は、結婚や出産、葬式や通夜に利用できる休暇です。特別休暇の中でもポピュラーで、導入している企業は多い傾向です。

    一般的に、従業員本人や親族などの関係性によって取得条件や取得期間が異なります。

    例えば、適用範囲を祖父母、両親、兄弟など2親等以内に限定することもあれば、3親等以内と適用範囲を広くする企業などさまざまです。また、取得日数に関しては、結婚による休暇取得の場合、従業員本人の結婚であれば7日間、従業員の子どもの結婚であれば1日間というように本人との関係性により取得可能日数が定められていることが多いようです。

    2.アニバーサリー休暇

    アニバーサリー休暇は、誕生日や結婚記念日など、従業員本人の何らかの記念日に取得できる休暇制度です。なかには、結婚記念日や子どもの誕生日など、範囲を広げて適用できるようにしている企業もあるようです。

    休暇設定を記念日当日に限定してしまうと業務の都合で取得困難なケースもあるため、記念日のある月であればいつでも取得できるなど配慮が大切です。

    3.赴任休暇、転勤休暇、異動休暇

    異動や転勤による引っ越し作業が発生した際に利用できる休暇制度として転勤の多い企業で導入されているようです。

    引っ越しは、賃貸アパートなど不動産業者との契約や、電気・ガスなど公共料金の変更、住民票の転出・転入、さらに家族が同伴するなら子どもの転校手続きなど非常に手間がかかり、従業員にとって負担が大きい作業となります。
    制度導入時には従業員の家庭の状況や引っ越しにかかる負担に合わせて日数や取得ルールを定めることをおすすめします。

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    自己研鑽系

    1.ボランティア休暇(社会貢献活動休暇)

    ボランティア休暇(社会貢献活動休暇)は、地域貢献や自然災害のサポートの際に取得できる休暇制度です。

    制度導入により、以下のように企業と従業員双方にメリットが期待できます。

    ①積極的な社会貢献活動による企業イメージの向上

    ボランティア活動により社会的責任を果たすことで企業イメージアップにつなげられます。

    ②人材の育成

    従業員の人的成長のみならず、実務能力やコミュニケーション力、リーダーシップの向上が期待できます。また、海外ボランティアでは語学力の向上も期待でき、グローバル人材の育成にも役立つでしょう。

    ③会社への帰属意識の醸成及び貢献意欲の高まり

    ボランティア活動を通し社会貢献することに前向きな企業の一員であることを認識することで、従業員自身の会社への帰属意識やモチベーションアップにつなげられます。

    厚生労働省による「働き方・休み方改善ポータルサイト」に、導入事例をはじめとした詳細が掲載されているので、ぜひご覧ください。

    2.教育訓練休暇

    教育訓練休暇は、従業員自身のスキルアップのために取得できる休暇制度です。

    国からのサポートとして、企業が従業員に対して教育訓練を実施した際に発生する訓練費用や教育訓練期間中に支払った賃金の一部が助成される人材開発助成金というものがありますので参考までにご覧ください。

    (例)

    • 教育訓練休暇等付与コース:教育訓練休暇制度を導入する企業
    • 人への投資促進コース:長期の教育訓練休暇(30日以上の連続休暇の取得)制度を利用して教育訓練を受ける企業

    その他

    1.裁判員休暇

    裁判員休暇は、従業員が裁判員に選ばれた際に利用できる休暇制度です。

    従業員が裁判員や裁判員候補者になったことを理由とした休暇付与は、法律で義務付けられていません。そのため、裁判員休暇は法定休暇とはいえず、「裁判員休暇を設けるか否か」「有給とするか無給とするか」については、企業の判断に委ねられます。

    ●裁判員休暇を設けるか否か

    労働基準法第7条では公民権の行使を保障しています。従業員が裁判員や裁判員候補者となったことで休暇を請求した場合、企業は拒むことができません。また、裁判員制度では、理由もなく裁判員を辞退することも認められず、企業が裁判員となることを辞退するように従業員に命じることもできません。そのため、多くの企業では、裁判員休暇を特別休暇として導入しています。

    ●有給とするか無給とするか

    有給か無給かの判断については、企業ごとに分かれますが、裁判員や裁判員候補者には旅費・日当(裁判所までの交通費と手続きや審理・評議の時間に応じた日当)が支払われるため無給としている場合、それにかかわらず有給の特別休暇として給与を支払う場合、給与と日当の差額を支払う場合などがあるようです。

    2.積立休暇制度

    失効した年次有給休暇をあらかじめ積み立てておき活用できる制度です。

    本来、年次有給休暇は付与した日から2年で時効になり失効してしまいますが、失効後も特別休暇として利用できるようにすることで、従業員側は年次有給休暇を無駄にせずにすむというものです。

    例として、失効した年次有給休暇を「最長40日」まで積み立て可能としている企業もあります。

    特別休暇の導入

    特別休暇の導入

    この章では、特別休暇の導入におけるメリットや注意点、活用できる助成金を解説します。

    メリット

    企業が特別休暇を導入することには、以下のようなメリットがあります。

    1.年次有給休暇の取得率が向上する

    特別休暇を導入すると年次有給休暇の取得率向上につながります。

    2021年3月に発表された東京海上日動リスクコンサルティング株式会社による「令和2年度『仕事と生活の調和』の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書」によると、特別休暇を導入している企業は、導入していない企業に比べて年次有給休暇の取得率が高いと報告されています。

    2.企業ブランディングで採用に貢献

    特別休暇制度は法的な縛りがないこともあって、企業ごとに工夫を凝らした独自の休暇制度を導入することができます。

    例えば、ペットフードを販売する日本ヒルズ・コルゲート株式会社では、ペットが亡くなった際に使える忌引き休暇を設けているのが特徴です。ペットも家族の一員であると考えている社員の気持ちを大切にしています。

    また、ゴルフ雑誌を出版している株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインでは、ゴルフ休暇を設け、さらにプレーにかかる費用の補助も行っているのが特徴です。

    企業の特性や社風に合わせた特別休暇制度は、企業ブランディングの一環として対外アピールに活かすことができます。企業の目指す方向性や商品、サービスの独自性をアピールすることで顧客の共感性を高めることにつながり、ブランディングに効果的でしょう。

    注意点

    特別休暇制度導入の際には、人事担当者や管理職が積極的に従業員へ制度内容を告知し、導入後は管理職が率先して特別休暇を取得するようにしましょう。管理職が特別休暇を取得しなければ、部下は取得することをためらってしまいます。制度導入後の定着のために、誰もが休暇を取得しやすい環境を構築することが大切です。

    また、特別休暇の名目で取得した休暇を、あとで年次有給休暇に振り替えることはできません。特別休暇導入の際には年次有給休暇の取得を阻害することがないか留意し、労働基準法に定める年次有給休暇の確実な年5日以上の取得ができているかにも注意しましょう。

    導入方法

    導入方法は、以下の順で行います。

    1.取得条件を決める

    これまで解説してきたように、特別休暇には法的な縛りがないため、以下のすべてを定めなければなりません。取得条件の決定には、従業員から広くアイデアを募る方法や、管理職や担当者の中から代表者を選んで制度設計チームを作る方法などが考えられます。

    • 制度の目的
      従業員から休暇のニーズ、希望を調査して、休暇取得の目的を決定する
    • 取得対象者
      部署ごと、業務の種類や職種ごとに休暇取得が可能かを検討し、対象者を決定する
    • 取得可能日数
      時間単位、半日単位、連続休暇の上限、取得可能日数の上限などを決定する
    • 給料の有無
      有給の制度とするか無給の制度とするかを決定する
    • 出勤率の算定
      休暇を出勤扱いとするか欠勤扱いとするか等を決定する
    • 取得条件や申請方法
      取得するための条件、事務手続きの方法を決定する

    2.就業規則への記載

    10名以上の従業員がいる事業所の場合は、就業規則に休暇制度を定めることが必要です。休暇は就業規則の絶対的必要記載事項に該当します。就業規則に定めた後は、労働者の過半数を代表する者(従業員の過半数で組織する労働組合がある場合には労働組合)の意見書とともに労働基準監督署に届け出て、従業員に周知することが必要です。

    就業規則を作成する際には、厚生労働省のサイト「働き方・休み方改善ポータルサイト」が参考になります。以下のサイトでは、さまざまな特別休暇の導入事例や就業規則の記載例が紹介されているため、ぜひ参考にしてください。

    助成金

    働き方改革の一環で、労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進目的で特別休暇の新制度導入を行った場合、導入に要した経費の一部(25万円を上限)を助成する働き方改革推進支援助成金というものがあります。人事・労務管理用のクラウド型システム、労務管理用ツールの導入費用も助成の対象となるため、ぜひ活用をご検討ください。

    ほかにも、病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇など、交付要綱で定められた一定の特別休暇を新たに導入した場合に助成金が支給されます。注意点として、助成金申請は期日があるので申請前に厚生労働省の詳細ページをご確認ください。

    【社労士アドバイス】特別休暇を導入する前に休暇管理の見直しがおすすめ

    ここまで特別休暇の具体例や導入メリットなどをご紹介してきました。特別休暇のメリットを知って導入意欲が湧いた方もいらっしゃるかもしれません。

    導入で失敗しないために、ひとつ注意点があります。

    現行の休暇管理はミスなく効率的に行えているのか、まず一度問題点を見直してから特別休暇の導入に進みましょう。法定休暇だけでも非常に管理に手間がかかります。特別休暇の休暇管理が加われば、さらに管理が複雑化し、ミスが発生しやすくなります。もし紙やエクセルで管理を行っている場合、特別休暇だけでなく年次有給休暇をはじめとした様々な休暇の管理を続けるのは難しいでしょう。

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    • 監修加治 直樹
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