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<建設業の働き方改革>2024年法改正対応について解説【社労士監修】

最終更新日 2023.02.10

<建設業の働き方改革>2024年法改正対応について解説【社労士監修】

2019年から始まっている時間外労働の上限規制ですが、2024年からは猶予対象だった建設業にも適用されます。建設業の現状を踏まえてどのような変化がおきるのか、国土交通省による「建設業働き方改革加速化プログラム」や活用できる各種助成金、残業削減の取り組みのポイントまでまとめて解説します。

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目次

    建設業の現状と働き方改革の方向性

    建設業の現状と働き方改革の方向性

    建設業は次世代への技術承継が大きな課題となっています。就業者のうち、55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進行し、さらに1997年には685万人いた就業者が2015年には500万人へと減少するなど、慢性的な人手不足に悩まされています。こうした課題を解消する意味でも働き方改革が進められています。

    まずは建設業で働き方改革が求められている背景について解説していきます。

    建設業就業者の現状

    建設業の現在の主な課題は以下の3つです。

    ① 働き手の高齢化による人手不足(※1)
    日本全体の生産年齢人口が減少する中で、建築業就業者の高齢化が進行しています。概ね10年後には60代以降の高齢者層の大量離職が見込まれており、その持続可能性が危ぶまれる状況となっています。

    ② 長時間労働の常態化(※2)
    建設業はかねてより長時間労働や休日が少ないことなどが指摘されており、全産業平均と比較して年間300時間以上の長時間労働となっています。他産業では一般的となっている週休2日も十分に確保されているとは言い難い状況です。

    元請け業者や顧客に振り回され、残業ありきの業務体系になってしまっているのも残業が減らない要因と言われています。

    ③ 給与や社会保険などの働き手の処遇(※3)
    業界全体でみると上昇傾向にありますが、生産労働者(現場で働く技能者)については、製造業と比べると低い水準にあります。

    給与の水準は全産業の平均を約26%も下回り、また、社会保険に未加入の企業が多いというのが現状です。

    建設業働き方改革加速化プログラム

    建設業における週休2日の確保をはじめとした働き方改革を加速させるため、国土交通省は新たな施策を策定しています。

    その施策とは「建設業働き方改革加速化プログラム」です。
    プログラムの主な内容は次の3つになります。

    ①長時間労働の是正

    建設業働き方改革加速化プログラムの主な内容の1つ目は、長時間労働の是正です。建設業では罰則付き時間外労働規制が施行される2024年を待たずに、長時間労働是正や週休2日の確保を図る取り組みです。建設業においては技能者の多数が日給月給であることに留意して進められています。

    具体的な内容は以下のとおりです。(※1)

    週休2日を達成した企業や、女性活躍を推進する企業など、働き方改革に積極的に取り組む企業を積極的に評価する
    既に週休2日制を実施している現場などモデルとなる優良な現場を可視化して、週休2日制の導入を後押しする
    長時間労働にならない適正な工期の設定を推進するため、各発注工事の実情を踏まえて「適正な工期設定等のためのガイドライン」を改訂する

    適正な工期設定等のためのガイドラインとは?

    国土交通省は、発注者、受注者が適正な建設工事の工期を確保するための基準としてガイドラインを設定しています。2024年に建設業においても時間外労働の上限規制がはじまることを受け、その準備として建設業界全体の工期設定を見直す事を目的に作成されました。

    ②給与・社会保険

    建設業働き方改革加速化プログラムの主な内容の2つ目は、給与・社会保険です。技能と経験にふさわしい処遇(給与)と社会保険加入の徹底に向けた環境を整備するための取り組みが進められています。

    技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現するための主な施策は以下です。(※1)。

    下請けの建設企業まで労務単価の改訂が行き渡るよう、発注関係団体・建設業団体に対して労務単価の活用や適切な賃金水準の確保を要請する
    建設キャリアアップシステムの普及と、概ね5年で全国約330万人のすべての建設技能者の加入を推進

    社会保険加入の徹底に関しては主に以下のような施策となります。(※2)(※3)

    工事の施工について、下請けの建設企業を含めて社会保険加入業者に限定するよう発注者に対して要請
    社会保険未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みの構築

    ③生産性向上

    建設業働き方改革加速化プログラムの主な内容の3つ目は、生産性向上です。生産性の向上に取り組む建設企業への後押しと、仕事を効率化するための取り組みの2軸で進められています。

    生産性の向上に取り組む建設企業への後押しの具体策としては、i-Construction(アイ・コンストラクション)の推進が挙げられます(※4)。

    i-Construction(アイ・コンストラクション)は、建設現場でコンピューターやネットワークなどの技術を建設現場で活用して、生産性の向上を図ることを狙いとしています(※4)。

    仕事を効率化するための具体策としては、次のような取り組みが挙げられます。

    手続きの負担を軽減するために申請手続きを電子化する
    IoTや新技術を導入し、施工品質の向上と省力化を図る
    建設キャリアアップシステムを活用して、書類作成等を効率化する

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    建設業の働き方改革のポイント

    建設業の働き方改革のポイント

    ここからは、建設業の働き方改革のポイントについて解説します。働き方改革は長時間労働是正、健康で働きやすい職場環境の整備などさまざまですが、主なポイントは以下の3つです。

    ①時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定される(2024年4月1日から)

    これまで建設業については、36協定で定める時間外労働の上限の基準は、適用除外とされていましたが、2024年4月1日以降は、罰則付きの時間外労働の上限が設けられます。

    時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。特別条項によって、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下の上限を超える時間外労働、休日労働はできなくなります。

    時間外労働が年720時間以内
    時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて1か月当たり80時間以内

    なお、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月までとなります。

    上記に違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されるおそれがあります。

    建設業には上限規制の例外規定がある

    先述の通り建設業にも2024年4月以降は時間外労働の上限が設けられるものの、一部例外規定が存在します。

    建設業では、地域住民の生命と財産を守り、安全で快適な社会の創造に寄与する役割があるという事情から、災害時の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について以下2つの規制は2024年4月1日以降も適用されません。

    月100時間未満
    2ヵ月から6か月平均80時間以内

    しかしながら、災害時の復旧・復興の事業に対しても、将来的には時間外労働の上限規制の適用が検討されているので、事業主は働き方改革を推し進める必要があります。

    【注意】時間外労働・休日労働をさせるためには36協定の締結と監督署への届出が必要

    労働時間の上限規制が猶予されている建設業についても、従業員に法定労働時間を超える時間外労働や休日労働をさせる場合は、36協定の締結と管轄の労働基準監督署への届出が必要です(※1)。

    労務管理の基本的な内容になりますが、労働基準法により以下の法定労働時間が定められており、使用者は原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけないと明記されています。

    労働基準法36条(※2)により、36協定を締結し、監督署へ届け出をした場合は時間外労働が認められます。ただしこの場合でも、原則として月45時間・年360時間が時間外労働の上限となり、無限に働かせることができるという規定ではないため、注意しましょう。

    ②中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ(2023年4月1日から)

    建設業の働き方改革の主なポイントの2つ目は、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げです。

    現在は、法定労働時間を超えて働く場合、また法定休日に働く場合の残業代の割増率は次の表の以上の額とされています。

    割増率
    法定労働時間超(1日8時間1週40時間) 25%
    法定休日(週1日もしくは4週4日) 35%
    深夜労働(22時~5時) 25%

    また、時間外労働が月60時間を超えた場合の残業割増賃金率は以下のとおりです。

    大企業:50%以上
    中小企業:25%以上

    しかし、2023年4月1日以降は、大企業、中小企業ともに月60時間超の残業割増賃金率は50%以上となります。会社の規模に関わらず、人件費の増加を防ぐために早急に残業抑制の取り組みを実施した方がいいでしょう。

    ③長時間労働者に対して面接指導等の実施が必要

    建設業の働き方改革の主なポイントの3つ目は、長時間労働者に対して面接指導等の実施が必要という点です。

    過重労働による脳疾患・心臓疾患等の健康障害の発症を予防するため、長時間の時間外労働や休日労働等をしている労働者に対して、事業者は面接指導を行う必要があります。時間外・休日労働時間が月80時間を超えた場合、かつ、疲労の蓄積が認められる場合は、申し出をした労働者に対し、医師による面接指導を実施しなければなりません。面接指導を実施した医師から必要な措置について意見聴取を行い、必要と認める場合は、適切な事後措置を実施する必要があります。

    また、時間外・休日労働時間が月45時間を超えた場合は、健康への配慮が必要な者が面接指導等の対象となるよう基準を設定し、面接指導を実施することが望ましいでしょう。

    建設業の働き方改革に関する助成金

    建設業の働き方改革に関する助成金

    ここからは建設業の働き方改革において、活用できる助成金について説明していきます。

    建設事業主や建設事業主団体等が、労働者の雇用の改善や建設労働者の技能の向上等をはかるための取り組みを行った場合に、以下のような助成を受けることができます。

    トライアル雇用助成金
    人材確保等支援助成金
    人材開発支援助成金
    業務改善助成金

    いずれの助成金も、原則雇用保険に加入している建設事業主を対象としております。それぞれの助成金の詳細を説明していきましょう。

    ①トライアル雇用助成金 若年・女性建設労働者トライアルコース

    若年者(35歳未満)又は女性を建設技能労働者等として一定期間試行雇用を行う中小建設事業主に対して、トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)が助成されます。

    こちらの助成金の利用にあたっては、以下いずれかの対象コースの支給決定を受けることが要件となります。

    一般トライアルコース
    障害者トライアルコース
    新型コロナウイルス感染症 対応トライアルコース
    新型コロナウイルス感染症 対応短時間トライアルコース

    助成額は1人あたり1か月4万円、3か月分となります。ただし、就労した日数等により減額となる場合があります。

    申請期限はトライアル雇用が終了した日の翌日から起算して2カ月以内です。

    ②人材確保等支援助成金

    人材確保支援助成金には次の2つのコースがあります。

    若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース
    作業員宿舎等設置助成コース

    若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースは、若年および女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行った事業主に対して助成されます。助成額は以下のとおりです。

    中小建設事業主:対象経費の5分の3<4分の3>
    中小建設事業主以外:対象経費の20分の9<5分の3>

    作業員宿舎等設置助成コースは、女性専用の作業施設を整備した場合と、被災三県(岩手県、宮城県、福島県)に所在する工事現場での作業員宿舎、作業員施設や賃貸住宅を整備した事業主に助成されます。助成額は以下のとおりです。

    女性専用の作業員施設を整備した場合:対象経費の5分の3<4分の3>
    被災三県の作業員宿舎等を整備した場合:対象経費の3分の2

    <>内は生産性要件を満たした場合の支給額になります。

    ③人材開発支援助成金

    人材開発支援助成金には次の2つのコースがあります。

    建設労働者認定訓練コース
    建設労働者技能実習コース

    建設労働者訓練コースは、建設関連の認定職業訓練または指導員訓練を実施した場合と、建設労働者に対して認定訓練を受講させた場合に事業主に助成されます。助成額は以下のとおりです。

    認定職業訓練または指導員訓練を実施した場合:対象経費の6分の1
    認定訓練を受講させた場合:1人1日3,800円<1人1日1000円>

    建設労働者技能実習コースは、若年者等の育成と熟練技能の維持・向上を図るため、キャリアに応じた技能実習を実施した場合に事業主に助成されます。助成額は以下のとおりです。

    経費助成 賃金助成
    雇用保険被保険者数20人以下 4分の3<20分の3> 1人1日8500円<1人1日2000円>
    雇用保険被保険者数21人以上 35歳未満:10分の7<20分の3>
    35歳以上:20分の9<20分の3>
    1人1日7600円<1人1日1750円>

    < >は生産性要件を満たした場合の増額分になります。

    ④業務改善助成金

    業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金の引き上げ、設備投資等を行った中小企業や小規模事業者等に、その費用の一部を助成する制度です。

    新型コロナウイルス感染症の影響により売上高が減少している事業者に対しては、助成対象経費が拡大される特例が設けられています。また、原材料費の高騰などで利益が減少した事業者に、特例を適用するなど、拡充が行われています。

    助成額は最大600万円で、上限額は賃金の引き上げ額と、引き上げる労働者数により決定します。

    まとめ

    建設業は高齢化の進行や、長時間労働の常態化、働き手の処遇など多くの課題があります。その中で特に長時間労働に関して、2024年からは建設業にも時間外労働の上限規制がスタートするため、対応は待ったなしの状況です。

    長時間労働を改善をするためには、まずは現状の勤怠情報を確認したうえで長時間労働の原因を探ることが大切です。その際、そもそも正しく勤怠管理ができておらず勤務実態が把握できないという場合は、勤怠管理方法を見直しましょう。建設業の場合は、現場ごとの工数管理を行っているケースが多く、工数管理と勤怠管理が同時に行えるような仕組みにするとよいでしょう。

    もし正確な勤務実態の把握に課題があるなら、工数管理機能がある勤怠管理システムをおすすめします。工数管理機能があることで現場ごとの稼働記録と勤怠情報と容易に照合してデータ比較することができるため、人員配置や作業効率化に役立てられます。
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    監修者
    岡 佳伸

    岡 佳伸

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    社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
    大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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