残業代の計算は1分単位が原則! 労働時間を分単位で正確に計算・管理するには?

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残業代の計算は1分単位が原則! 労働時間を分単位で正確に計算・管理するには?

使用者が労働者に対して残業代を支払うことは、労働基準法で定められている義務です。たとえわずか1分であったとしても、法定時間を超える時間外労働が行われているのであれば、それは残業代支払いの対象となります。
企業の労務管理担当者にとって、残業時間を正確に把握して算出するのはとても煩雑な作業です。とはいえ、残業時間を切り捨ててしまうのは法律違反となります。本記事を参考に残業時間とその計算方法などを習得し、適切な労務管理のための自社に合った方法を見出していきましょう。

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この記事の目次

    残業時間の賃金支払いは原則的に1分単位

    残業時間の計算で違法となるケースとは

    日々の業務の中では電話や顧客の対応が長引いたり、終業時間までに業務を終えられなかったりするなど、さまざまな事情で法定時間を超える労働が必要となるケースが多々あります。そして、法定時間を超える労働を行えば、それがたとえ1分でも1秒でも、残業時間とみなされます。これは小さな時間単位であったとしても、労働時間を切り捨ててしまうことで労働者に不利益を与えないように労働基準法で定められたルールです。
    例えば、休憩中に問い合わせの電話が入り、その対応に30分かかったとしましょう。法律では、6時間を超える8時間以内の労働に対し45分、8時間を超える労働に対しては1時間の休憩をとることが定められているため、使用者が対応にかかった時間を無視して1時間の休憩をとったことにしてしまうとすれば、そのやり方は違法です。企業の労務管理担当者は、実労働の時間を切り捨てるのではなく、適切な端数処理の実施に務めなければなりません。

    <実労働を伴う残業時間の計算で違法となる例>
    残業を15分単位で切り捨てる
    30分単位で残業時間を報告するよう指示している
    毎日、始業前に準備作業があるにも関わらず、賃金計算をしていない
    決まった休憩時間が取れなくても、何も手当がない

    なお不当に労働時間を切り捨ててしまった場合、賃金未払いに相当するため、賃金全額払いの原則を定めた労働基準法第24条の違反となり、30万円以下の罰金となる可能性があります。

    労働時間の切り捨てが認められる場合

    ただし、以下の範囲であれば、切り捨てが違法とならないことがあります。

    ①1か月分の残業時間を合計した結果、そこで生じた30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる。
    ②1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨てて50銭以上を1円に切り上げる。

    1か月の労働時間を合計した結果、30分に満たない29分以下は切り捨て、30分以上の場合は切り上げて1時間増しにカウントするならば、それは必ずしも労働者の不利益になるとはいえないからです。また、時間単位での賃金計算は残業代に関わる事務を簡略化できるため、労働者の同意の上で、労働基準法24条および37条としては取り扱わないとされています。

    【基本】残業時間の計算方法

    【基本】残業時間の計算方法

    「法定時間外労働」とは

    労働基準法で定める労働時間とは、原則として1日8時間、1週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」といい、あわせて毎週少なくとも1回の休日を労働者に与えることとされています。また、法定労働時間を超えるには36協定の締結・届出が必要であり、法定労働時間を超えて時間外労働(残業)した場合は、以下の割増率を乗じて割増賃金を支払わなくてはなりません。

    <割増賃金の計算方法>

    種類 支払う条件 割増率
    時間外
    (時間外手当・残業手当)
    法廷労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき 25%以上
    時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき 25%以上
    (※1)
    時間外労働が1か月60時間を超えたとき(※2) 50%以上
    (※2)
    休日
    (休日手当)
    法定休日(週1)に勤務させたとき 35%以上
    深夜
    (深夜手当)
    22時から5時までの間に勤務させたとき 25%以上

    なお、1か月に60時間を超える時間外労働については、企業規模を問わず割増率を5割以上とすることとされています。

    「法定内残業」とは

    1日8時間、1週40時間のいずれかを超えて働いた場合、割増賃金を支払う必要がありますが、法定労働時間内で行った時間外労働(残業)の場合は、割増賃金を支払う義務はなく、通常賃金で問題はありません。これを「法定内残業」といいます。
    たとえば、9時~13時勤務のパート労働者が15時まで残業したとしても、労働時間は6時間となり、法定労働時間内におさまっています。そのため、割増賃金の支払いは不要ということになります。

    残業時間の計算の仕方

    割増賃金は以下の方法で算出します。必要なのは1時間あたりの賃金額です。パートやアルバイトなど、時給で雇用契約している場合はわかりやすいのですが、月給制の場合、基本給やその他手当てなどが時間あたりいくらになっているのかを算出しておく必要があります。

    <割増賃金の算出法>
    1時間あたりの賃金額×時間外労働、休日労働または深夜労働を行わせた時間数×割増率

    <1時間あたりの賃金額(月給制の場合)の算出法>
    ①1年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12=1か月の平均所定労働時間
    ②月給÷1か月の平均所定労働時間=1時間あたりの賃金額

    ※割増賃金の算定基礎に含まれる賃金から除外できる項目は、「家族手当」「通勤手当」「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」の7つで、これらに該当しない賃金はすべて算出の対象となる場合があります。

    <割増賃金の算出例>
    9時~18時(1時間休憩含む)勤務の社員が20時まで残業した場合、法定外残業は2時間であるため、2時間×1.25の割増賃金を支払う。
    23時まで残業した場合、法定外残業は5時間だが、22時~23時の1時間は深夜手当の対象となるため、4時間×1.25、1時間×1.5の割増賃金となる。

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    働いていない時間は1分単位で賃金カットが可能?

    ノーワーク・ノーペイの原則

    賃金は原則、労働した時間に対して支払われます。逆の言い方をすれば、労働が提供されていなければ、使用者は賃金を支払わなくてもよいということになります。
    所定労働時間を超えて労働した場合は残業代が発生しますが、早退や私的な外出などによって、提供すべき労働を行わなかった時間がある場合、その時間に応じて賃金を減額することができるのです。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。

    この原則が適用される状況としては、主に以下のようなケースが挙げられます。

    遅刻、早退、欠勤、その他
    介護休暇・介護休業
    産前産後休業
    育児休暇・育児休業
    自然災害等の不可抗力による休業
    公民権行使の期間

    上記のような場合、ノーワーク・ノーペイの原則によって1分単位で賃金をカットすることが認められています。例えば、所定労働時間が8時間である社員が5分早退をした場合、賃金として算出されるのは“7時間55分の時間に対して”ということになるわけです。いわば、“残業代1分単位”の逆バージョンということになります。

    支払い義務に関する考え方は、就業規則の規定など労働契約の定めが重要となりますが、基本的な概念として、通常は「働いたら賃金を支払う」「働かなかったら賃金を支払わない」と解釈され、この「働かなかったら支払わない」について、一般的に「ノーワーク・ノーペイの原則」と呼んでいます。

    ノーワークであっても支払いが必要とされることも

    ただし民法では、当事者に異なる取扱い(任意の変更)を許容する「任意規定」が定められています。例えば、休職中も賃金の一部を支給するなど、就業規則に労働の有無にかかわらず賃金を支払うと定めれば、それが優先されることであり、ノーワーク・ノーペイには例外もあるということになります。

    労働者への賃金支払いについては法的に保護されており、使用者は「通貨払いの原則」「直接払いの原則」「全額払いの原則」「毎月一回以上」「一定期日払い」という、賃金支払い5原則の概念に沿って賃金を支払う義務があります。また、先に述べたように、労働がない(働かない)場合でも賃金等の支払いが必要とされることはあります。

    時間外労働における賃金計算のポイント

    時間外労働における賃金計算のポイント

    ここまで述べてきたように、使用者は時間外労働について、労働基準法ならびに就業規則のルールに基づき適切に把握する義務があり、その際に端数となる労働時間を切り捨てることはできません。

    時間外労働に対する割増賃金計算のポイントについては、「【基本】残業時間の計算方法」ですでに解説していますが、端数処理については、この項で初めて明記するポイントもあるので注意してください。

    ①法定外残業(時間外労働)は、割増率を乗じて計算する(「【基本】残業時間の計算方法」を参照のこと)。
    ②1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる。
    ③1か月における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、②と同様に処理する。
    ④1か月の賃金額を計算する場合、100円未満の端数が生じた場合は、50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことができる。
    ⑤1か月の賃金額に1000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことができる。
    ※④⑤を取扱い際は、その旨を就業規則に定めることが必要です。

    勤怠管理システム導入で、分単位の労働時間を正確に管理

    労働時間の把握については、厚生労働省の出している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を遵守する必要があります。背景には、労働時間の把握を労働者の自己申告制にすることによる不適正な運用等があり、長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じていることがあげられます。

    しかし、厚生労働省のガイドラインを遵守するには、アナログでは困難な管理が多々あります。おすすめなのは、従業員からの勤怠情報をそのままWEBで保管し、月末には勤怠情報を自動集計してくれる勤怠管理システムの導入です。勤怠管理システムには、従業員によってシステム上に打刻された勤怠情報を法定内・法定外など残業時間の種類別に分単位で集計することができたり、月中の従業員の打刻状況や打刻漏れの有無を管理画面上でリアルタイムに確認できたりと、正確な勤怠情報を手間なく集計・管理するための機能が多数搭載されています。特にクラウド型の勤怠管理システムは、インターネット環境さえあれば時間や場所を問わず利用できる手軽さと、IT知識がなくても導入しやすい操作性の良いものが多いため、システム導入の初心者向けといえるでしょう。以下にクラウド型勤怠管理システムについて解説している記事を紹介しますので、参考にしてください。

    まとめ

    今回は残業代の支払いに関して解説しました。労働基準法で定められた法定時間より1分でも過ぎれば時間外労働とみなされ、労働者側は1分刻みで残業代を会社に請求できることが法律上で認められています。また、企業側はたとえ1分でも残業時間を切り捨てれば違法となります。一方で、事務処理を簡潔に行うため、一定の端数処理は認められていますが、それは日々の適切な勤怠管理の上に成り立っています。現状の勤怠管理に問題がないのかを今一度振り返り、必要に応じて対策を行いましょう。

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    • 監修石川 弘子
    • フェリタス社会保険労務士法人 代表
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      著書:「あなたの隣のモンスター社員」(文春新書)「モンスター部下」(日本経済新聞出版社)
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